エッセイ

性同一性障害とトランスジェンダー

「性同一性障害という言葉がこんなに広がってるのは日本だけだ、日本は性同一性障害大国だ」と、理由も言わずにそれが悪いことのように言う人がいますけど、なんでそれじゃダメなのかの理由は言えないんだよね。

 

というか、逆に言うと、世界で日本だけが、トランスジェンダーの中で、「性同一性障害の診断を持っている人」と「持ってない・診断が出なかった人」を明確に分けることが可能なんだよね。これ、一部の人たちには非常に都合が悪いわけ。「トランスジェンダーとは、医療ケアを受けたい人も受けたくない人もいる。どちらもトランスジェンダーとして一緒である」という説明を強固にするためには、性同一性障害概念は邪魔なんだよね。「ただのクロスドレッサー(異性装者)・トランスヴェスタイト(女装者)も、性同一性障害の診断を持って医療ケアを受けて身体を望む性別に近づけてる人も、同じトランスジェンダーである」としておいた方が都合がいい人たちがいるんだよね。「クロスドレッサー(異性装者)・トランスヴェスタイト(女装者)」と「性同一性障害の診断を持って、医療ケアを受けて、望む性別で社会的にも生きてる人」を別にされると困るわけ。一緒のものとして、世間に誤解させておきたいんだよね。トランスジェンダーという意味を曖昧にしておきたい。

 

だから「性同一性障害という概念は廃止された」という宣伝に忙しかったりしてる。それは完全なウソで、正確には「性別不合に名称変更される(た)」なのにね。性同一性障害概念がこの世から消えた方が、なにかと都合がいいんだよね。そして、クロスドレッサーやトランスヴェスタイトも含んだ「トランスジェンダー」という名前を広めたいわけ。性同一性障害概念の元だと、クロスドレッサーやトランスヴェスタイトは排除されるからね。それでは困るわけ。

 

でもまぁ、厚生労働省は、「性別不合は性同一性障害の後継概念である」と正しく認識しているので、彼らの野望はシオシオになるでしょう。また彼らは、チャンスをうまく生かすことができなかった。

 

あと、「アンブレラタームとしてのトランスジェンダー」にも文句付けたりしてるよね。それは、アンブレラタームの元では、トランスジェンダーの中にクロスドレッサーやトランスヴェスタイトが含まれることが明確になってしまって、困るからなんだよね。

 

いずれにしても、「トランスジェンダーの語源はヴァージニアプリンス」説を採用するのであれば、そもそも「トランスジェンダーとは、トランスヴェスタイトである。クロスドレッサーである」という定義になるんだよね。アンブレラタームを採用することによって、はじめてその中に、トランスセクシャルや性同一性障害の診断を持ってる人たちが含まれるようになるんだよね。

 

さて、どっちを選びたいの?

 

ちゃんと「クロスドレッサーにも、性別自己選択の権利がある。戸籍の性別の取り扱いの変更を可能にせよ。当然、手術は無しだ」と主張すればいいだけなのにね。それはやらないよね。

 

※ヴァージニアプリンスは「トランスヴェスタイトとは男性だけである。女性は好きな服を着られるのだから、トランスヴェスタイトではない」と主張しているので、ここでは、トランスヴェスタイト=女装者としています。