エッセイ

2020年10月の記事一覧

トランスジェンダー*:用語の修辞的風景

http://theangels.co.uk/2015/08/transgender-the-rhetorical-landscape-of-a-term/

トランスジェンダーの現在の主な定義は、傘のメタファーに依存しています(アンブレラターム)。

 

性同一性および/または性表現が、出生時に割り当てられた性別(sex)と異なる人のための包括的な用語。

この用語には以下のものが含まれますが、これらに限定されるものではありません。

トランスセクシュアル、クロスドレッサー、その他の性別を異にする人々。
(“ GLAADメディアリファレンスガイド”)

この包括的で「限定されていない」用語はどのように論争を招くのでしょうか?

 

トランスジェンダーはトランスセクシャルを排除するための植民地化用語であり、現代のオンライントランスコミュニティの間で「トランスウォーズ」として知られ、「詐欺だ」と批判している人もいます。
特にトランスジェンダーがトランスセクシャルを排除していると感じる人のために、この用語に関する議論はその歴史的出現について語られた物語に根ざしています。
トランスジェンダーの歴史的出現についての特別な話が目立つようになっています。


ヴァージニアプリンスは「トランスジェンダー」という用語を名詞として(トランスセクシャルでもトランスヴェスタイトでもなく)「生殖器に頼ることなく社会の性別:gender を恒久的に変えた人々」と表現した」(Stryker “(De)Subjugated”)


1990年代初頭、レスリー・ファインバーグは、影響力のあるパンフレット「トランスジェンダー解放」において名詞から形容詞へと用語を変更し、ジェンダー抑圧に直面した人々を含むように定義を拡大しました。
これが「トランスジェンダー」の現代的な用法の総称としての誕生です。(Rawson 124–125)


しかし結局のところ、この物語は事実上不正確であるだけでなく、トランスジェンダーの歴史的出現を深刻に過度に単純化しすぎています。
この論点は単に歴史的な正確さの問題ではありませんが、サブカルチャー用語がどのように発明され流通しているかを理解するための異なる方法を表しています。

 

問題の核心は単なる定義的または語源的なものではなく、むしろ文脈的景観や変化する地域社会のリーダーシップとの動的な関係において、サブカルチャー言語が出現し循環する方法です。

 

重要なことは、ヴァージニアプリンスは、トランスジェンダーという用語からトランスセクシャルを非常に明確に除外したことです。

 

トランスセクシャルを排除する用語としてのトランスジェンダー。


1990年代のいくつかの主要な文化的出来事がこの用語の採用を後押しした可能性が高いです。

トランスジェンダー法と雇用政策に関する国際会議(ICTLEP)が1992年から1996年まで毎年開催され、1992年に、レスリーファインバーグは「トランスジェンダー解放」という人気の小冊子を発行しました。

 

1995年には、TV-TS Tapestryという人気の雑誌がTransgender Tapestryとなりました。1996年に、トランスジェンダー・ドットコムは、トランスセクシュアルとクロスドレッシングの両方のコミュニティのために登録され、紹介されました。

 

そして1997年に、Harry Benjamin International Gender Dysphoria Association が彼らの団体名を「The World Professional Association for Transgender Health (WPATH)」と名称変更しました。


要するに、1990年代初頭までに、「トランスジェンダー」という用語は、トランス + ジェンダー用語の間で注目を集めるようになり、医学界と活動家界の両方で確固たる足がかりを得ました。


病理概念や非病理であることにはなんの関係もありませんでした。


ヴァージニアプリンスは、「トランスジェンダーという用語は、フルタイムで女性として生活するという特定の行動のための名前で、SRSなしの意味で名前を付けた」と主張します。


プリンスは自分自身をこの用語の唯一の権威として位置づけ、自分自身と矛盾するトランスジェンダーの使用の反対を強く主張していました。
※ヴァージニアプリンスは、「トランスジェンダーにトランスセクシャルを含めるな」と強く主張してたということです。


それでも、トランスジェンダーを公​​式に定義しようとするプリンスの試みにもかかわらず、彼女が反対したトランスセクシャルを含む傘の用法:アンブレラタームは1990年代を通して人気を集め続けていました、そして2000年代までにそれは支配的な用法として固定されました。

 

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ICD-11

ICD-10は1993年にWHOがリリースしましたが、アメリカが採用したのは2015年の10月からです。

 

アメリカはそれまでICD-9を採用していました。

 

つまり、ICDの新しい版がWHOからリリースされても、世界中の国々が一斉に切り替えなければいけないというルールではないわけです。

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性同一性障害とトランスジェンダー

「性同一性障害という言葉がこんなに広がってるのは日本だけだ、日本は性同一性障害大国だ」と、理由も言わずにそれが悪いことのように言う人がいますけど、なんでそれじゃダメなのかの理由は言えないんだよね。

 

というか、逆に言うと、世界で日本だけが、トランスジェンダーの中で、「性同一性障害の診断を持っている人」と「持ってない・診断が出なかった人」を明確に分けることが可能なんだよね。これ、一部の人たちには非常に都合が悪いわけ。「トランスジェンダーとは、医療ケアを受けたい人も受けたくない人もいる。どちらもトランスジェンダーとして一緒である」という説明を強固にするためには、性同一性障害概念は邪魔なんだよね。「ただのクロスドレッサー(異性装者)・トランスヴェスタイト(女装者)も、性同一性障害の診断を持って医療ケアを受けて身体を望む性別に近づけてる人も、同じトランスジェンダーである」としておいた方が都合がいい人たちがいるんだよね。「クロスドレッサー(異性装者)・トランスヴェスタイト(女装者)」と「性同一性障害の診断を持って、医療ケアを受けて、望む性別で社会的にも生きてる人」を別にされると困るわけ。一緒のものとして、世間に誤解させておきたいんだよね。トランスジェンダーという意味を曖昧にしておきたい。

 

だから「性同一性障害という概念は廃止された」という宣伝に忙しかったりしてる。それは完全なウソで、正確には「性別不合に名称変更される(た)」なのにね。性同一性障害概念がこの世から消えた方が、なにかと都合がいいんだよね。そして、クロスドレッサーやトランスヴェスタイトも含んだ「トランスジェンダー」という名前を広めたいわけ。性同一性障害概念の元だと、クロスドレッサーやトランスヴェスタイトは排除されるからね。それでは困るわけ。

 

でもまぁ、厚生労働省は、「性別不合は性同一性障害の後継概念である」と正しく認識しているので、彼らの野望はシオシオになるでしょう。また彼らは、チャンスをうまく生かすことができなかった。

 

あと、「アンブレラタームとしてのトランスジェンダー」にも文句付けたりしてるよね。それは、アンブレラタームの元では、トランスジェンダーの中にクロスドレッサーやトランスヴェスタイトが含まれることが明確になってしまって、困るからなんだよね。

 

いずれにしても、「トランスジェンダーの語源はヴァージニアプリンス」説を採用するのであれば、そもそも「トランスジェンダーとは、トランスヴェスタイトである。クロスドレッサーである」という定義になるんだよね。アンブレラタームを採用することによって、はじめてその中に、トランスセクシャルや性同一性障害の診断を持ってる人たちが含まれるようになるんだよね。

 

さて、どっちを選びたいの?

 

ちゃんと「クロスドレッサーにも、性別自己選択の権利がある。戸籍の性別の取り扱いの変更を可能にせよ。当然、手術は無しだ」と主張すればいいだけなのにね。それはやらないよね。

 

※ヴァージニアプリンスは「トランスヴェスタイトとは男性だけである。女性は好きな服を着られるのだから、トランスヴェスタイトではない」と主張しているので、ここでは、トランスヴェスタイト=女装者としています。

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